消費税法上の実質行為者課税

 

1 要約

 卸売市場において卸売業者が行う課税資産の譲渡等が問屋と卸売業者のどちらに帰属するかについては、消法13条1項により、以下の3点を考慮して判断する。

(1) 売買代金回収のリスクの負担者

(2) 売買契約締結に関与した者とその経緯

(3) 瑕疵担保責任の所在

 

2 消費税法上の実質行為者課税

 消法13条1項は、所法12条及び法法11条等にならって実質行為者課税の原則を定めています。*1

 法法及び所法と同様に、資産の譲渡等及び特定仕入等をしたのが誰かという課税物件の帰属についての問題を解決するための手法です。

 

3 要件とその判断

(1) 課税要件

 消法13条1項の課税要件は以下の3つです。

ア 「法律上資産の譲渡等を行つたとみられる者が単なる名義人であること」
イ その名義人が「その資産の譲渡等に係る対価を享受せず」
ウ 「その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受すること」

 以下ではアの「単なる名義人」を」どのように判断するかという問題について記述します。

 

(2) 裁判例(大阪地判平25年6月18日未公刊?)

ア 事案の概要

 卸売市場で商法上の問屋(商法551条*2)を営む卸売業者は、法的には権利義務の主体となります(商法552条1項*3)が、卸売業者に帰属するのは卸売金額の一部である委託手数料のみであって、これ以外の売買代金はすべて委託者に帰属することになります。すなわち、名義や形式上は卸売業者が権利の帰属先となりますが、売業者と買受人との間の売買契約にかかる経済的利益は、卸売業者でなく委託者に帰属するという実体が認められます。

 大阪地判平25年6月18日(未公刊?)では、卸売業者が卸先に有する売掛金について消法39条1項*4の貸倒損失を計上したところ、課税庁が上述の実体に鑑みて単なる名義人である卸売業者は同法の「課税資産の譲渡等を行った」者にあたらないとして更正処分等を行ったため、卸売業者が出訴しました。

 結論として、本裁判例は、資産の譲渡等を行った者の実質判定はその法的実質によるべきとして、卸売業者は「単なる名義人」には当たらず、実質的にも資産の譲渡等を行った者であるとし、課税庁の更正処分等を取消しました。その内容は以下のとおりです。

イ 判示事項

 すなわち、「原告が本件各買受人からの売買代金回収のリスクを負うものであって、委託者(出荷者)は同リスクを何ら負わないこと、原告と買受人との間の牛枝肉の売買代金の合意(売買契約の締結)についても、委託者(出荷者)は特段の関与はしていないこと、買受人に対する瑕疵担保責任を負うのも原告であって委託者(出荷者)ではないことに照らせば、本件牛枝肉取引において、原告が、その法的実質として、単なる名義人として課税資産(本件牛枝肉)の譲渡を行ったものにすぎないということはでき」ないとしました。

 

(3) 基準

 (2)の裁判例から、一応の基準として、問屋と委託者それぞれについて、以下の諸点を考慮して資産の譲渡等を行った者を判定することとなります。

ア 売買代金回収のリスクの負担者
イ 売買契約締結に関与した者とその経緯

 委託者が実際に指値を付したことがなく、売買契約締結に際して特段の関与をしていないことが認められれば、資産の譲渡等を行った者が問屋であるといえる一要素となります。

ウ 瑕疵担保責任の所在

 

4 関係通達

 消基通10ー1ー12は委託者の資産の譲渡等の金額は、受託者が譲渡等して収受した金額であることを基本としていますが、消基通4ー1ー3*5において、当該委託者等と受託者等との間の契約の内容、価格の決定経緯、当該資産の譲渡等に係る代金の最終的な帰属者が誰であるか等を総合考慮するものとして納税義務者を判定するものとしていることから、資産の譲渡等の帰属先の判断については、上記3(3)の基準と同様法的な実質を判定する趣旨と考えられます。

 なお、代金の「最終的な」帰属者という表現は経済的な実質を考慮するようにも読めるが、法律的帰属説が「法律関係を明確にするに当たり、その他の事情に加えて経済的効果や経済的目的をも考慮するのは、法律関係の解釈において当然なすべき」とするものである(広島地判平18年6月28日 )し、経済的実質は法形式を考慮しないことからも、この通達はあくまで法律的帰属説に立つものと考えられる。

*1:消法13条1項 法律上資産の譲渡等を行つたとみられる者が単なる名義人であつて、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行つたものとして、この法律の規定を適用する。

*2:商法551条1項 問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

*3:商法551条1項 問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

*4:消法39条1項 事業者・・・が国内において課税資産の譲渡等・・・を行つた場合において、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき更生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたことその他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じたため、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなつたときは、当該領収をすることができないこととなつた日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額・・・の合計額を控除する。

*5:消基通4-1-3 資産の譲渡等が委託販売の方法その他業務代行契約に基づいて行われるのであるかどうかの判定は、当該委託者等と受託者等との間の契約の内容、価格の決定経緯、当該資産の譲渡に係る代金の最終的な帰属者がだれであるか等を総合判断して行う。