仕入税額控除における用途区分の判定

 

1 要約

仕入税額控除の個別対応方式における用途区分については、課税仕入れを行った日の状況に基づき判断をする。

・販売を目的とするマンションの取得であっても、同日に管理委託契約等を結んだ事情等がある場合には、貸付の目的をも持つものとして、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」にあたる。

 

 

2 仕入税額控除制度と用途区分

(1) 仕入税額控除

 消法30条1項*1により、事業者が国内において行った課税仕入れについては、これに係る税額を課税標準に対する消費税額から控除することができます。
 しかし、消法30条2項*2により、課税売上高が5億円超あるいは課税売上割合が95%未満であるときは、控除対象の仕入税額の計算については、個別対応方式(同条同項1号)又は一括控除方式(同条同項2号)によらなければなりません。

(2) 用途区分

 個別対応方式においては、課税仕入を以下の3つに分類する必要があります。

ア 課税資産の譲渡等にのみ要するもの
イ 課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(「その他の資産の譲渡等」)にのみ要するもの
ウ 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの 

 

 

3 用途区分の判断

(1) 用途区分の判定の時期

 「課税仕入れを行った日の状況に基づき、当該課税仕入れをした事業者が有する目的、意図等諸般の事情を勘案し、事業者において行う将来の多様な取引のうちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断」(さいたま地判平25年6月26日税務訴訟資料263号順号12241)することになります。これは、消法30条2項1号が「要するもの」と規定し「要したもの」とは規定していないことや、消費に着目して計算する以上、費用収益対応は考慮しないで判断するため*3です。

 また、「課税仕入れを行った日とは、課税仕入れに該当する資産の譲受け若しくは借受をした日又は役務の提供を受けた日」をいいます(上掲さいたま地判平25年6月26日)。
 もっとも、課税仕入れを行った日において、区分が明らかにされていない場合には、その課税期間の末日までに明らかにされた区分によっても差し支えないとするのが消基通11−2−20*4です。

 

(2) 裁判例(上掲さいたま地判平25年6月26日)

ア 事案の概要

 原告は、信託受益権の譲渡を目的として、本件マンションの建設に着手し、これを取得したが、取得日と同日に管理会社と本件マンションの委託管理契約を締結した。建設着手とほぼ同時期にAと締結した信託受益権売買契約は後になって解除されたが、結局Bとの間で本件マンションの売買が成立している。

 原告は、本件マンションの仕入れについて、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」として申告を行いましたが、課税庁は「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」であるとして更正処分を行ったため、原告が出訴しました。

 なお、不動産管理信託は、消法14条1項*5にいう「受益者等課税信託」にあたり、係る取引における信託受益権の譲渡は課税資産の譲渡にあたる(消基通4ー3ー3*6)。

 

イ 判示事項

 本件マンションはもともと信託受益権の売却を目的として建設・購入されたものであること、契約が後に解除されたにしても課税仕入れの時点では存続していた認められること等から、「本件マンションを販売する又はその信託受益権を譲渡する目的で取得したということは否定できない」としつつ、一方で、課税仕入れの日と同日に、ビル管理委託契約を結び、賃貸借契約を締結し、いずれの契約も本件マンションの使用目的を居住用に限定している等からすると、「本件マンションを住宅として貸し付ける目的でも取得したと認めるのが相当である」としました。すなわち、原告による「本件マンションの取得は、本件課税仕入れの日・・・において、本件マンションを販売する(信託受益権を譲渡する)目的とともに、住宅として貸し付けることを目的としてされたと認められる」とされました。

 原告からは、投資家の抱くリスクを少なくし値崩れを防ぐ目的であって入居者の募集は販売活動である、勘定科目を固定資産から棚卸資産に修正した、賃貸を前提とした資金調達方法を採ってなかった、賃料収入は売却代金の0.017%に過ぎないといった主張がされましたが、判決は「本件マンションの値崩れ防止を目的としてされたとしても、そのことから直ちに「入居者の募集活動は正に販売活動そのものである」とはいえない・・」、勘定科目の変更は「かえって、本件課税仕入れ時には本件マンションを「固定資産」として長期保有しようと認識していたことを裏付けるというべき」と応答し、その他の主張も認定を覆すには足りないとしています。

 なお、当判決に先立つ裁決平23年3月23日(裁決集82集278頁)においては、本件マンションに係る水道施設利用権についても争われましたが、その課税仕入れの日の時点では、入居者の募集活動を開始していなかった等の事情からすれば原告に賃料収入が帰属することが予定されていたとは認められないことから、課税資産の譲渡等にのみ要するものと認めています。

*1:消法30条 事業者・・・が、国内において行う課税仕入れ・・・については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第45条第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額・・・から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額・・を控除する。

*2:消法30条2項 前項の場合において、同項に規定する課税期間における課税売上高が5億円を超えるとき、又は当該課税期間における課税売上割合が100分の95に満たないときは、同項の規定により控除する・・・課税仕入れ等の税額・・・の合計額は、同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算した金額とする。
1号 当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び特定課税仕入れ並びに当該課税期間における前項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下この号において「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合 イに掲げる金額にロに掲げる金額を加算する方法
イ 課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額
ロ 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額
2号 前号に掲げる場合以外の場合 当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法

*3:仕入税額控除は、流通過程における税負担の累積を防止するため、一定の要件の下に、資産等の譲渡に係る税額から仕入税額を控除する制度であるが、法30条の規定に照らすと、仕入れた資産が、仕入日の属する課税期間中に譲渡されるとは限らないため、控除額の算定においては、仕入れと売上げの対応関係を切断し、当該資産の譲渡が実際に課税資産譲渡に該当したか否かを考慮することなく、仕入れた時点において、課税仕入れに当たるか否かを判断するものとしたと解される(上掲さいたま地判平25年6月月26日)」

*4:消基通11-2-20 個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れ及び保税地域から引き取った課税貨物を課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分は、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日の状況により行うこととなるのであるが、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日において、当該区分が明らかにされていない場合で、その日の属する課税期間の末日までに、当該区分が明らかにされたときは、その明らかにされた区分によって法第30条第2項第1号《個別対応方式による仕入税額控除》の規定を適用することとして差し支えない。

*5:消法14条 信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に係る資産等取引(資産の譲渡等、課税仕入れ及び課税貨物の保税地域からの引取りをいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)は当該受益者の資産等取引とみなして、この法律の規定を適用する。

*6:消基通4-3-3 受益者等課税信託の受益者等が有する権利の譲渡が行われた場合には、その権利の目的となる信託財産の譲渡が行われたこととなるのであるから留意する。