質問検査権

 

1 要約

・質問検査権は「調査について必要があるとき」に認められる。

・その行使において違法がある場合には、一定の場合に更正・決定が違法となりうるし、国家賠償請求の対象となる場合もありうる。

 

2 質問検査権

(1)定義

 質問検査権(税通74条の2)*1とは、「課税要件事実について関係者に質問し、関係の物件を検査する権限」をいいます(金子905頁)。

 

(2)性質

 いわゆる任意調査を認めるものであって、強制調査を認めるものではありません。ここに強制調査とは、相手方の意に反して事業所等に立ち入り、各種物件を検査することをいい、任意調査とは強制調査でないものをいうものと考えられます。

 相手方の意に反する質問検査権を認めていない点で直接の強制力はないものの、刑罰(税通127条2号・3号等)を背景とした検査受任義務があり、間接強制調査と表現されることもあります。

 

(3)承諾について

 任意調査には、その定義から、相手方の承諾が必要とされます。

 この承諾について黙示のものでも許されるのかという問題がありますが、肯定的に解すべきでしょう。もっとも、納税義務者本人の業務に従事する家族、従業員等である場合には「質問検査権の行使が納税義務者本人の承諾が得られないことを回避する手段、目的でなされることのないよう特別の配慮をすることが望ましく、したがって、納税義務者本人の事前の承諾が得られていない場合における納税義務者本人の業務に従事する家族、従業員等における黙示の承諾の有無については、その具体的状況を勘案したうえで、慎重に判断する必要がある」とされます(大阪高判平10年3月19日判タ1014合183頁)。

 

3 要件基準

 以下で若干の論点について判例及び裁判例を基に解説を行います。

(1)「調査について必要があるとき」

ア 意義

 「調査について必要があるとき」とは、「国税庁国税局または税務署の調査権限を有する職員において、客観的な必要性があると判断される場合」をいいます。そして、この客観的な必要性は、「当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ」て判断されるとするのが判例最判昭48年7月10日刑集27巻7号1205頁)です。

イ 具体的な内容

 もっとも、「客観的な必要性」という表現は抽象的な基準にとどまっており、上掲最判昭48年7月10日がそうであったように、過少申告の疑いが存在する場合に限られるかは示されていません。

 この点について、「確定申告後に行われる法人税に関する調査については、過少申告等の疑いがある場合のみならず、当初からそのような疑いが明らかではないが、申告の真実性、正確性を確認する必要がある場合も含まれると解すべき」とした裁判例(横浜地判平10年1月26日税資230号87頁)があるほか、税通74条の9第1項第3号の通知すべき「調査の目的」*2の内容について、税通令30条の4第2項が「納税申告書の記載内容の確認又は納税申告書の提出がない場合における納税義務の有無の確認その他これらに類する調査の目的を、それぞれ通知する」としていることからすれば、過少申告の疑いが明らかである場合に限られず、申告の適否の確認をするということだけでも客観的な必要性があるとするのが現状の運用と思われます。

 

(2)行使の時期等の制限

 (1)に述べた必要性が認められる場合に、さらにその調査の時期等の妥当性については、「質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衝量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」との上掲最判昭48年7月10日を参考に判断することになります。

 

(3)違法があった場合

 質問検査権は、調査のための権限であるので、たとえ違法なものであったとしても、それに基づく更正・決定が必ずしも違法になるとはいえません。もっとも、「質問・検査がその前提要件を欠く場合(たとえば、相手方の意に反して検査を強行した場合)など著しい違法性を有する場合は、それに基づく更正・決定は違法になると解すべき」とされます(金子914頁)。

 拒否されていたにもかかわらず、居住部部分に立入り、下着を入れている引出しをかき回す等の調査をしたことについて青色取消処分が取消されたものとして京都地判平成12年2月25日(訟月46巻9号3724頁)がある。この裁判例では、青色取消しの要件である帳簿備付けの不備の意味について、課税庁が常識的な対応をしてるのに納税者が出してこないということと捉え、課税庁の調査の全過程を見てその手法に問題点がなかったかを総合的に判断しています。

*1:税通74条の2第1項 国税庁国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)…の当該職員…は、所得税法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件…を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。

*2:税務署長等…は、…当該職員…に納税義務者に対し実地の調査…において第74条の2から第74条の6まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者…に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。
三 調査の目的

収益の帰属時期

  

1 要約

・収益の帰属時期については、法人税法上権利確定主義がとられている。

棚卸資産の引渡しがいつ行われたか明らかでない場合、諸事情の総合考慮により当事者の合意を探ることになる。

 

2 収益の帰属時期

(1)概説

 収益、費用および損失等をどの年度に帰属させるかについては、法人税法は一般的な規定を置いていません。そこで「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(法人税法22条4項)により、発生主義により認識をすべきと考えられます(金子337頁)。そして発生主義会計において収益は実現原則に従って認識されます。具体的には、①財やサービスの移転を通じて履行義務を充足したこと及び②移転した財やサービスと交換に企業が権利を有する対価を獲得したことの2つの要件を満たしたときに、収益が実現したものとされ、認識されることとなります(桜井78頁)。

 以上の会計処理の基準を踏まえて、法人税法上所得の発生の時点をどのように判断するかが問題となります。これについては「所得税法の場合と同様に、所得の実現の時点を基準とすべきであり、原則として、財貨の移転や役務の提供などによって債権が確定したときに収益が発生すると解すべき」(金子337頁)、「収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきものと考えられる」(最判平5年11月25日民集47巻9号5278頁)とされ、いわゆる権利確定主義がとられていると解されており、上に述べた実現原則とほぼ同様の考え方をとっているものと思われます。

 

(2)棚卸資産

 以上の一般論を前提に、個々の取引の中でどのような事情をもって権利の確定とするかが問題となりますが、以下では特に不動産取引における棚卸資産について検討します。

 上に述べた実現の2要件及び法基通2ー1ー2*1を考えると、棚卸資産の「引渡し」の時期が収益認識の時期になると考えられます。

 そうすると、この「引渡し」がどのようなものであるかが明らかにされる必要があります。代金支払、不動産引渡し、移転登記等が同時に行われて取引が一時に完了するような場合にはその一時点で引渡しがされたとして問題ありませんが、そのような場合ではなく、給付が複数回に渡って行われた場合に何をもって引渡しとすべきなのでしょうか。

 

3 要件基準

(1)要件

 下記の裁判例を参考とすれば、各契約当事者の給付が段階的に複数回に分けて行われ、外見上引渡しがいつ行われたか必ずしも明らかでない場合には、

 所有権の移転時期、

 代金支払の約定及び実際の支払状況、

 登記関係書類や建物の鍵の引渡しの状況、

 危険負担の移転時期、

 果実収受権及び費用負担の移転時期、

 所有権移転登記の時期

等を考慮して、現実の支配の移転時期の合意内容について判断し、その合意された時期をもって引渡しの時期とすることになります。

 

(2)裁判例(東京高裁平10年7月1日判タ1036号316頁)

ア 事案の概要

 省略

イ 判示事項

(要件に付した番号は筆者による)

 「各契約当事者の給付が段階的に複数回に分けて行われ、外見上引渡しがいつ行われたか必ずしも明らかでない場合…には、①契約上買主に所有権がいつ移転するものとされているかということだけではなく、②代金の支払に関する約定の内容及び実際の支払状況、③登記関係書類や建物の鍵の引渡しの状況、④危険負担の移転時期、⑤当該不動産から生ずる果実の収受権や当該不動産にかかる経費の負担の売主から買主への移転時期、所有権の移転登記の時期等の取引に関する諸事情を考慮し、当該不動産の現実の支配がいつ移転したかを判断し、右現実の支配が移転した時期をもって当該不動産の引渡しがあったものと判断するのが相当である。」

 一方で、①契約において引渡し時期は明示されていないこと、②総額55億円、契約成立時に着手金5億円、昭和62年9月11日に中間金10億円を支払うこととされ、40億円分の抵当権が設定されており、原告の手取り収入は15億円となること、③登記関係書類、鍵の引渡し、賃借に人への貸主変更通知などは一切行われていないこと、④昭和62年9月11日以降、引渡し前の売主及び買主の責めによらない事由によって滅失又は毀損した場合の危険を負担すること、⑤買主は昭和62年9月11日以降の公訴公課、立退費用のほか、本来所有者に対して発生する一切の費用を負担することの各事実が認定されていました。

 ②④⑤から、「本件不動産の売買は、抵当権付きの不動産の売買と同視することができるものであり」、その他の事情すべてを考えあわせると、原告と買主の間では、買主が本件不動産の代金額から抵当権の被担保債権額を差し引いた金額を支払ったことにより、本件不動産の現実の支配権を買主に移転する合意があったものと認めるのが相当であるとしました。

 

*1:法基通2-1-2 棚卸資産の販売に係る収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、その引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷した日、船積みをした日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。この場合において、当該棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。

(1) 代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日

(2) 所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日

交際費の損金不算入

 

1 要約

 ・交際費の要件は、①支出の相手方が事業に関係ある者等であること、②支出の目的が事業関係者との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであること、③行為の形態が接待、饗応、慰安、贈答その他これに類する行為であることの3つである(3要件説)。

 

2 交際費課税

(1)定義

 交際費等とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」をいう(措置法61条の4第4項)。*1

 

(2)交際費の損金不算入

ア 損金性

 会計上、販売費及び一般管理費として処理される交際費は、法法22条3項2号及び同条4項により、「別段の定めがあるものを除き」、損金に算入されます。この「別段の定め」として以下のように措置法上の定めがあるため、その計算に基づいて算入額が決まることとなります。

イ 損金不算入規定

(ア)原則

 法人が平成26年4月1日から平成32年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額のうち接待飲食費の額の100の50に相当する金額を超える部分の金額は、損金不算入となります(措置法61条の4第1項)。*2

(イ)特例

 事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるものについては、(ア)の接待飲食費の100分の50基準のほか、800万円(月数案分)の定期控除限度額によることもできます(措置法61条の4第1項)。*3

 

3 要件基準

(1)要件

 交際費等に該当するためには、以下の3要件(ア~ウ)を満たす費用を支出する(エ)ことが必要です(東京高判平15年9月9日高民集56巻3号1頁)。

ア 支出の相手方

 「支出の相手方が事業に関係ある者等であ」ること

 近い将来事業に関係を持つに至る者(東京地判決昭44年11月27日行集20巻11号1501頁)や新規に取引を開始しようとする者(東京地判昭53年1月26日訴月24巻3号692頁)も含まれます。

イ 支出の目的

 「支出の目的が事業関係者との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることである」こと

 なお、この判断には、「支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断して決すべき」とされます。

ウ 行為の形態

 「行為の形態が接待、饗応、慰安、贈答その他これに類する行為であること」

 そして、「交際行為とは、一般的に見て、相手方の快楽追求欲、金銭や物品の所有欲などを満足させる行為をいう」としています。これについては、相手方において接待等であることの認識を必要とする趣旨と解する向きがありますが、裁判例は明示していません。

エ 支出

 「支出するもの」と規定されていることから、資金の流出を必要とするものと考えられ、例えば減価償却費や譲渡損のようなものはこれにあたらない。

 

(2)裁判例(東京高判平15年9月9日高民集56巻3号1頁)

ア 事案の概要

 原告は、医家向医薬品の製造販売を業とする法人である。大学病院の医師等から論文の英文添削の依頼を受け、相場価格で請け負っていた。英文添削については、アメリカの業者に発注し処理していたが、この費用は請負価格の3倍以上であって、原告の負担額は1事業年度あたり1億円超にもなっていた。その後、原告による差額負担が報道されると、請負費用は英文添削費用と同程度に改訂された。

 課税庁は、原告の差額負担が交際費に該当し損金不算入となるものとして更正処分を行ったため、原告が出訴した。

 

イ 基準と判断内容

 上掲3(1)ア~ウの3要件を交際費等に該当するための要件とした上で、以下のとおり判示し、原告の請求を棄却しました??。

(ア)支出の相手方について

「本件英文添削の依頼者の中には、…大学の医学部やその付属病院の教授、助教授等、原告の直接の取引先である医療機関の中枢的地位にあり、医薬品の購入や処方権限を有する者も含まれていたことからすれば、全体としてみて、その依頼者である研究者らが上記「事業に関係のある者」に該当する可能性は否定できない」。

(イ)支出の目的について

 動機について、「本件英文添削は、若手の研究者らの研究発表を支援する目的で始まったものであり、その差額負担が発生してからも、そのような目的に基本的な変容はなかった」

 金額について、「その金額は、それ自体を見れば相当に多額なものであるが、その一件当たりの金額や、原告の事業収入全体の中で占める割合は決して高いものとはいえないこと」

 態様について、「本件英文添削の依頼者は、主として若手の講師や助手であり、原告の取引との結び付きは決して強いものではないこと、その態様も学術論文の英文添削の費用の一部の補助である」

 効果について、「それが効を奏して雑誌掲載という成果を得られるものはその中のごく一部である」

 以上の「支出の動機、金額、態様、効果等からして、事業関係者との親睦の度を密にし、取引関係の円滑な進行を図るという接待等の目的でなされたと認めることは困難である」。

(ウ)行為の形態について

 「本件英文添削の差額負担は、通常の接待、供応、慰安、贈答などとは異なり、それ事態が直接相手方の関心を買えるというような性質の行為ではなく、むしろ学術奨励という意味合いが強いこと、その具体的態様等からしても、金銭の贈答と同視できるような性質のものではなく、また、研究者らの名誉欲等の充足に結びつく面も希薄なものであることなどからすれば、交際費等に該当する要件である「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」をある程度広げて解釈したとしても、本件英文添削の差額負担がそれに当たるとすることは困難である」。

(3)除外規定

 以上に述べた交際費等の基準に該当するとしても、飲食費であって、5,000円以下のものについては交際費等に該当しないものとされています(措置法61条の4第3項第2号、措置令37条の5第1項)。*4

 注意が必要なのは、この除外規定の対象が飲食費、すなわち「交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。」*5であることから、社内交際費は対象外という点です。

 

4 関係通達等

(1)具体例

 交際費の範囲等については、措通61の4(1)-1以降にその範囲や具体例等が規定されています。

 

(2)社内交際費

 なお、交際費には社内交際費が含まれます。社内交際費とは、交際費を支出した法人に属する役員、従業員、株主を相手方とする交際費をいいます。(措通61の4(1)-22)。*6措置法61条の4第4項第1号が従業員に対する一部の催事を交際費から除く趣旨となっていることから、これらの者も事業に関係のある者に含まれていると解されています。問題は福利厚生費との区別ですが、「損金算入を否認する趣旨が法人の濫費抑制の点にあることを考慮すれば、法人が従業員等の慰安のために忘年会等の費用を負担した場合、それが法人が社員の福利厚生のため費用全額を負担するのが相当であるものとして通常一般的に行われている程度のものである限りその費用は交際費等に該当しないが、その程度を超えている場合にはその費用は交際費等に該当する…。そして忘年会等が右のような意味で通常一般的に行われている程度のものか否かは個々の忘年会等の具体的態様、すなわち開催された場所、出席者一人あたりの費用、飲食の内容等を総合して判断すべきであ」る(東京地判昭55年4月21日行裁31巻5号1087頁)という裁判例の基準があります(もっとも、具体的な判断過程は判示からは明らかではありません)。

 また、措置法61条の4第4項第1号に専ら従業員の慰安のための催事に通常要する行為について交際費等から除外する旨明示されている*7ほか、措通61の4(1)-10において、創立記念日等の具体的な行事とそれに関する支出についての若干の例が挙げられています。*8

 ところで、飲食費の対象がそもそも従業員を含まないとする規定がある一方、社内交際費の損金不算入の金額の計算においては飲食費の額に含めるのはなぜなんでしょうか。

*1:措置法61条の4第4項 第一項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい、第一項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。
一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
二 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
三 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用

*2:措置法61条の4第1項 法人が平成二十六年四月一日から平成三十二年三月三十一日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額のうち接待飲食費の額の百分の五十に相当する金額を超える部分の金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

*3:措置法61条の4第1項 前項の場合において、法人(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十二項に規定する投資法人及び資産の流動化に関する法律第二条第三項に規定する特定目的会社を除く。)のうち当該事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額(資本又は出資を有しない法人その他政令で定める法人にあつては、政令で定める金額)が一億円以下であるもの(法人税法第二条第九号に規定する普通法人のうち当該事業年度終了の日において同法第六十六条第六項第二号又は第三号に掲げる法人に該当するものを除く。)については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額をもつて、前項に規定する超える部分の金額とすることができる。
一 前項の交際費等の額が八百万円に当該事業年度の月数を乗じてこれを十二で除して計算した金額(次号において「定額控除限度額」という。)以下である場合 零
二 前項の交際費等の額が定額控除限度額を超える場合 その超える部分の金額

*4:措置法61条の4第3項第2号 第1項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為...のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)...
二 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用

措置令37条の5第1項 法第61条の4第4項第2号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項に規定する飲食費として支出する金額を当該飲食費に係る飲食その他これに類する行為に参加した者の数で除して計算した金額とし、同号に規定する政令で定める金額は、5000円とする。

*5:措置法61条の4第4項 …第1項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第2条第15号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第2号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。

*6:措通61の4(1)ー22 措置法第61条の4第4項に規定する「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」には、直接当該法人の営む事業に取引関係のある者だけでなく間接に当該法人の利害に関係ある者及び当該法人の役員、従業員、株主等も含むことに留意する。

*7:措置法61条の4第4項第1号 第1項に規定する交際費等とは、…支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい、…
一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用

*8:措通61の4(1)-10 社内の行事に際して支出される金額等で次のようなものは交際費等に含まれないものとする。

(1) 創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用
(2) 従業員等(従業員等であった者を含む。)又はその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品に要する費用

仕入税額控除における用途区分の判定

 

1 要約

仕入税額控除の個別対応方式における用途区分については、課税仕入れを行った日の状況に基づき判断をする。

・販売を目的とするマンションの取得であっても、同日に管理委託契約等を結んだ事情等がある場合には、貸付の目的をも持つものとして、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」にあたる。

 

 

2 仕入税額控除制度と用途区分

(1) 仕入税額控除

 消法30条1項*1により、事業者が国内において行った課税仕入れについては、これに係る税額を課税標準に対する消費税額から控除することができます。
 しかし、消法30条2項*2により、課税売上高が5億円超あるいは課税売上割合が95%未満であるときは、控除対象の仕入税額の計算については、個別対応方式(同条同項1号)又は一括控除方式(同条同項2号)によらなければなりません。

(2) 用途区分

 個別対応方式においては、課税仕入を以下の3つに分類する必要があります。

ア 課税資産の譲渡等にのみ要するもの
イ 課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(「その他の資産の譲渡等」)にのみ要するもの
ウ 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの 

 

 

3 用途区分の判断

(1) 用途区分の判定の時期

 「課税仕入れを行った日の状況に基づき、当該課税仕入れをした事業者が有する目的、意図等諸般の事情を勘案し、事業者において行う将来の多様な取引のうちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断」(さいたま地判平25年6月26日税務訴訟資料263号順号12241)することになります。これは、消法30条2項1号が「要するもの」と規定し「要したもの」とは規定していないことや、消費に着目して計算する以上、費用収益対応は考慮しないで判断するため*3です。

 また、「課税仕入れを行った日とは、課税仕入れに該当する資産の譲受け若しくは借受をした日又は役務の提供を受けた日」をいいます(上掲さいたま地判平25年6月26日)。
 もっとも、課税仕入れを行った日において、区分が明らかにされていない場合には、その課税期間の末日までに明らかにされた区分によっても差し支えないとするのが消基通11−2−20*4です。

 

(2) 裁判例(上掲さいたま地判平25年6月26日)

ア 事案の概要

 原告は、信託受益権の譲渡を目的として、本件マンションの建設に着手し、これを取得したが、取得日と同日に管理会社と本件マンションの委託管理契約を締結した。建設着手とほぼ同時期にAと締結した信託受益権売買契約は後になって解除されたが、結局Bとの間で本件マンションの売買が成立している。

 原告は、本件マンションの仕入れについて、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」として申告を行いましたが、課税庁は「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」であるとして更正処分を行ったため、原告が出訴しました。

 なお、不動産管理信託は、消法14条1項*5にいう「受益者等課税信託」にあたり、係る取引における信託受益権の譲渡は課税資産の譲渡にあたる(消基通4ー3ー3*6)。

 

イ 判示事項

 本件マンションはもともと信託受益権の売却を目的として建設・購入されたものであること、契約が後に解除されたにしても課税仕入れの時点では存続していた認められること等から、「本件マンションを販売する又はその信託受益権を譲渡する目的で取得したということは否定できない」としつつ、一方で、課税仕入れの日と同日に、ビル管理委託契約を結び、賃貸借契約を締結し、いずれの契約も本件マンションの使用目的を居住用に限定している等からすると、「本件マンションを住宅として貸し付ける目的でも取得したと認めるのが相当である」としました。すなわち、原告による「本件マンションの取得は、本件課税仕入れの日・・・において、本件マンションを販売する(信託受益権を譲渡する)目的とともに、住宅として貸し付けることを目的としてされたと認められる」とされました。

 原告からは、投資家の抱くリスクを少なくし値崩れを防ぐ目的であって入居者の募集は販売活動である、勘定科目を固定資産から棚卸資産に修正した、賃貸を前提とした資金調達方法を採ってなかった、賃料収入は売却代金の0.017%に過ぎないといった主張がされましたが、判決は「本件マンションの値崩れ防止を目的としてされたとしても、そのことから直ちに「入居者の募集活動は正に販売活動そのものである」とはいえない・・」、勘定科目の変更は「かえって、本件課税仕入れ時には本件マンションを「固定資産」として長期保有しようと認識していたことを裏付けるというべき」と応答し、その他の主張も認定を覆すには足りないとしています。

 なお、当判決に先立つ裁決平23年3月23日(裁決集82集278頁)においては、本件マンションに係る水道施設利用権についても争われましたが、その課税仕入れの日の時点では、入居者の募集活動を開始していなかった等の事情からすれば原告に賃料収入が帰属することが予定されていたとは認められないことから、課税資産の譲渡等にのみ要するものと認めています。

*1:消法30条 事業者・・・が、国内において行う課税仕入れ・・・については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第45条第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額・・・から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額・・を控除する。

*2:消法30条2項 前項の場合において、同項に規定する課税期間における課税売上高が5億円を超えるとき、又は当該課税期間における課税売上割合が100分の95に満たないときは、同項の規定により控除する・・・課税仕入れ等の税額・・・の合計額は、同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算した金額とする。
1号 当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び特定課税仕入れ並びに当該課税期間における前項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下この号において「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合 イに掲げる金額にロに掲げる金額を加算する方法
イ 課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額
ロ 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額
2号 前号に掲げる場合以外の場合 当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法

*3:仕入税額控除は、流通過程における税負担の累積を防止するため、一定の要件の下に、資産等の譲渡に係る税額から仕入税額を控除する制度であるが、法30条の規定に照らすと、仕入れた資産が、仕入日の属する課税期間中に譲渡されるとは限らないため、控除額の算定においては、仕入れと売上げの対応関係を切断し、当該資産の譲渡が実際に課税資産譲渡に該当したか否かを考慮することなく、仕入れた時点において、課税仕入れに当たるか否かを判断するものとしたと解される(上掲さいたま地判平25年6月月26日)」

*4:消基通11-2-20 個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れ及び保税地域から引き取った課税貨物を課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分は、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日の状況により行うこととなるのであるが、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日において、当該区分が明らかにされていない場合で、その日の属する課税期間の末日までに、当該区分が明らかにされたときは、その明らかにされた区分によって法第30条第2項第1号《個別対応方式による仕入税額控除》の規定を適用することとして差し支えない。

*5:消法14条 信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に係る資産等取引(資産の譲渡等、課税仕入れ及び課税貨物の保税地域からの引取りをいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)は当該受益者の資産等取引とみなして、この法律の規定を適用する。

*6:消基通4-3-3 受益者等課税信託の受益者等が有する権利の譲渡が行われた場合には、その権利の目的となる信託財産の譲渡が行われたこととなるのであるから留意する。

消費税法上の実質行為者課税

 

1 要約

 卸売市場において卸売業者が行う課税資産の譲渡等が問屋と卸売業者のどちらに帰属するかについては、消法13条1項により、以下の3点を考慮して判断する。

(1) 売買代金回収のリスクの負担者

(2) 売買契約締結に関与した者とその経緯

(3) 瑕疵担保責任の所在

 

2 消費税法上の実質行為者課税

 消法13条1項は、所法12条及び法法11条等にならって実質行為者課税の原則を定めています。*1

 法法及び所法と同様に、資産の譲渡等及び特定仕入等をしたのが誰かという課税物件の帰属についての問題を解決するための手法です。

 

3 要件とその判断

(1) 課税要件

 消法13条1項の課税要件は以下の3つです。

ア 「法律上資産の譲渡等を行つたとみられる者が単なる名義人であること」
イ その名義人が「その資産の譲渡等に係る対価を享受せず」
ウ 「その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受すること」

 以下ではアの「単なる名義人」を」どのように判断するかという問題について記述します。

 

(2) 裁判例(大阪地判平25年6月18日未公刊?)

ア 事案の概要

 卸売市場で商法上の問屋(商法551条*2)を営む卸売業者は、法的には権利義務の主体となります(商法552条1項*3)が、卸売業者に帰属するのは卸売金額の一部である委託手数料のみであって、これ以外の売買代金はすべて委託者に帰属することになります。すなわち、名義や形式上は卸売業者が権利の帰属先となりますが、売業者と買受人との間の売買契約にかかる経済的利益は、卸売業者でなく委託者に帰属するという実体が認められます。

 大阪地判平25年6月18日(未公刊?)では、卸売業者が卸先に有する売掛金について消法39条1項*4の貸倒損失を計上したところ、課税庁が上述の実体に鑑みて単なる名義人である卸売業者は同法の「課税資産の譲渡等を行った」者にあたらないとして更正処分等を行ったため、卸売業者が出訴しました。

 結論として、本裁判例は、資産の譲渡等を行った者の実質判定はその法的実質によるべきとして、卸売業者は「単なる名義人」には当たらず、実質的にも資産の譲渡等を行った者であるとし、課税庁の更正処分等を取消しました。その内容は以下のとおりです。

イ 判示事項

 すなわち、「原告が本件各買受人からの売買代金回収のリスクを負うものであって、委託者(出荷者)は同リスクを何ら負わないこと、原告と買受人との間の牛枝肉の売買代金の合意(売買契約の締結)についても、委託者(出荷者)は特段の関与はしていないこと、買受人に対する瑕疵担保責任を負うのも原告であって委託者(出荷者)ではないことに照らせば、本件牛枝肉取引において、原告が、その法的実質として、単なる名義人として課税資産(本件牛枝肉)の譲渡を行ったものにすぎないということはでき」ないとしました。

 

(3) 基準

 (2)の裁判例から、一応の基準として、問屋と委託者それぞれについて、以下の諸点を考慮して資産の譲渡等を行った者を判定することとなります。

ア 売買代金回収のリスクの負担者
イ 売買契約締結に関与した者とその経緯

 委託者が実際に指値を付したことがなく、売買契約締結に際して特段の関与をしていないことが認められれば、資産の譲渡等を行った者が問屋であるといえる一要素となります。

ウ 瑕疵担保責任の所在

 

4 関係通達

 消基通10ー1ー12は委託者の資産の譲渡等の金額は、受託者が譲渡等して収受した金額であることを基本としていますが、消基通4ー1ー3*5において、当該委託者等と受託者等との間の契約の内容、価格の決定経緯、当該資産の譲渡等に係る代金の最終的な帰属者が誰であるか等を総合考慮するものとして納税義務者を判定するものとしていることから、資産の譲渡等の帰属先の判断については、上記3(3)の基準と同様法的な実質を判定する趣旨と考えられます。

 なお、代金の「最終的な」帰属者という表現は経済的な実質を考慮するようにも読めるが、法律的帰属説が「法律関係を明確にするに当たり、その他の事情に加えて経済的効果や経済的目的をも考慮するのは、法律関係の解釈において当然なすべき」とするものである(広島地判平18年6月28日 )し、経済的実質は法形式を考慮しないことからも、この通達はあくまで法律的帰属説に立つものと考えられる。

*1:消法13条1項 法律上資産の譲渡等を行つたとみられる者が単なる名義人であつて、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行つたものとして、この法律の規定を適用する。

*2:商法551条1項 問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

*3:商法551条1項 問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

*4:消法39条1項 事業者・・・が国内において課税資産の譲渡等・・・を行つた場合において、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき更生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたことその他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じたため、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなつたときは、当該領収をすることができないこととなつた日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額・・・の合計額を控除する。

*5:消基通4-1-3 資産の譲渡等が委託販売の方法その他業務代行契約に基づいて行われるのであるかどうかの判定は、当該委託者等と受託者等との間の契約の内容、価格の決定経緯、当該資産の譲渡に係る代金の最終的な帰属者がだれであるか等を総合判断して行う。

貸倒損失の損金算入

 

1 要約

・貸倒損失の損金算入ができる場合は、法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ及び形式上貸倒れの3種類がある。

・事実上及び形式上の貸倒れについては通達において損金経理が求められているが、課税庁は損金経理がされていないことのみをもって更正をすることはできない。

 

2 貸倒損失の種類

(1)定義

 貸倒損失とは、倒産などにより、売掛金・貸付金などの金銭債権が回収できなくなった債権者の損失のことをいいます。

 

(2)税法上の取扱い

ア 共通の内容

 貸倒損失は、損失であることから、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」にあたり、「別段の定め」があるもののほかは、「損金の額に算入すべき金額」となります(法法22条3項3号)*1

 この「別段の定め」としては、法法33条1項*2があり、原則として評価損を認めていません。したがって、売掛金等の一部を評価替えし、貸倒損失として計上することはできないこととになります。ただし、あくまで、評価損の計上を認めないものですので、その全部につき回収できないものとして損失を計上することは許容されます。

 許容される貸倒れがいかなるものかについては、法令及び通達に規定がありますので、以下でその類型ごとに述べます。

イ 法律上の貸倒れ

 更生計画認可の決定等一定の法律上の事由により債権の全部又は一部を切り捨てた場合の貸倒れをいいます(法基通9-6-1)。

 法法33条3項から、更生計画認可の決定があったことによって評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、これを損金の額に算入するものとされてています。*3

 このほかに上掲法基通9-6-1に掲げる事由に該当すれば、それぞれの事由により切り捨てられることとなった金額の貸倒損失の計上をするものとしています。*4

 なお、この場合の貸倒れは、その規定ぶりからもわかるとおり、損金算入が強制されるのですので、損金経理がされていない場合減算処理が必要です。

 

ウ 事実上の貸倒れ

  回収不能となった金銭債権の貸倒れをいいます(法基通9ー6ー2)。

 債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、損金経理を要件に、貸倒損失の額を損金の額に算入することができます。*5

エ 形式上の貸倒れ

 取引の一定期間の停止等の形式的事情による売掛債権の貸倒れをいいます。

 法基通9-6-3に掲げる事由に該当すれば、損金経理を要件に、貸し倒れ損失の額を損金の額に算入することができます。*6

 

3 貸倒損失の損金経理要件について 

(1)損金経理の定義

 損金経理とは、法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいいます(法法2条25号)。確定した決算とは、「定時株主総会による計算書類の承認(会社法438条2項)または定時株主総会に提出された計算書類の取締役による内容の報告(同439条)」をいいます(金子868頁)。損金経理要件を課されているものについては、申告調整のみによって損金の額に算入することはできません。
 例えば、減価償却費について損金の額に算入する金額は、「その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額」とされており(法法31条1項)、税法上の償却限度額内で損金経理した金額が損金の額となります。

 

(2)問題の所在

 貸倒損失には、「債権の回収ができないことが明らかとなった事業年度中に貸倒れとして損金経理をしておかなければ、その後になって、当該債権についてこれを貸倒損失金であるとする主張がし得なくなるものと解すべき実定法上の根拠はない」(東京地判平元年7月24日 税務訴訟資料173号292頁)と判示されるように、損金経理を要件とする法律上の根拠がありません。一方で、法基通9ー6ー2~3は「損金経理をすることができる」ないし「損金経理をしたときは、これを認める」としており、損金経理を要件としていますが、これはなぜでしょうか。

 

(3)通達のいう「損金経理」の位置付け

ア 判断の大枠

 法基通9ー6ー2によれば、「金銭債権につき‥その全額が回収できないことが明らかになったとき」に損金経理をすることができるとあります。この「回収できないことが明らかになったとき」とは、「債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らか」でないければならず、また、「その全額が回収不能であることは客観的に明らかでなければならないが、そのことは、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情のみならず、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衝量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念にしたがって総合的に判断される」(最小判平16年12月24日民集58巻9号2637頁)こととされています。

 

イ 損金経理の位置付け

 東京地判昭57年4月26日税務訴訟資料142号2093頁は、全額回収の見込みがないことが確実であることが必要で、「単に回収困難の程度では貸倒損失を認めるべきではない」としつつ、「貸倒損失の認定上、損金経理や確定申告は法律上の要件とされていないものの、貸倒れの有無は、これについて直接の利害を有し、回収の能否に最大の関心を有しているはずの債権者において最も的確に把握していると見られるから、こうした債権者が貸倒れや、また、それに至らないまでも回収困難な債権の処理につき一定の方式を採用しているにも関わらず、いまだその処理に至っていないような場合には、特段の事情が認められない限り、貸倒れ状態はいまだ到来していないとみるのが相当」としています。
 ある債権が回収不能であるか否かについて納税者に一定の判断基準があるとき、その基準は、納税者がその有する債権の回収可能性について諸々の要素を考慮して設定しているものと考えられます。そして、このとき考慮される要素は、おおむね前掲最小判平16年12月24日があげたような事情をも考慮したものとなっていると考えられます。
 そうすると、そのような判断基準の下で、納税者において貸倒れの処理が行われていない場合には、「特段の事情がない限り、貸倒れ状態はいまだ到来していない」(前掲東京地判昭57年4月26日)というように、貸倒状態に至ってないことについての推定を働かせているという理解になろうかと思います。
 したがって、通達9-6-2~3が損金経理要件を規定しているのは、損金経理をしていなければ、未だ貸倒れ状態に至っていないとの推定が働くからということになります。すなわち、貸倒れの場合に要求される損金経理要件は、減価償却費の場合等の損金経理要件とは異なり、貸倒れ状態の推定に関する要件であることになります。

 このことから、課税庁は、納税者が損金経理をせずに貸倒損失を損金算入する申告書を提出した場合でも損金経理をしていないことのみから直ちに更正することはできず、貸倒れが生じたといえるだけの「特段の事情」が認められないということを確認する必要があるものと考えられます。


 ※もっとも、このような理解をする場合には、通達の書きぶりと矛盾します。通達9ー6ー2は「回収できないことが明らかになった場合には、‥損金経理をすることができる」としており、「損金経理をしているときは、回収できないことが明らかである場合として取り扱う(あるいは推定する)」とはしていないからです。

*1:法法22条3項 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
・・・
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

*2:法法33条1項 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

*3:法法33条3項 内国法人がその有する資産につき更生計画認可の決定があつたことにより会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定に従つて行う評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、第一項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

*4:法基通9-6-1 法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。

(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(2) 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(3) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額

イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

*5:法基通9-6-2 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。

(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

*6:法基通9-6-3 債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下9-6-3において同じ。)について法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める。

(1) 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)

(2) 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき

(注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない。